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【天井効果とフロア効果】その意味と起こる原因、対策までどこよりも分かりやすく解説します!!

解決したい悩み

  • 天井効果やフロア効果って何なの?
  • 天井効果やフロア効果を分かりやすく解説してほしい
  • 天井効果やフロア効果の対策も知りたい

この記事では、天井効果やフロア効果について詳しく知りたいという人に向けて、天井効果やフロア効果の意味や原因、実際の対策を分かりやすく解説していきます。

この記事を読むことで天井効果やフロア効果について正しく理解することができ、実際に対策もできるようになります。

それでは解説していきます。

天井効果、フロア効果とは

天井効果とは平均値+1SDがデータのとり得る値の上限を超えていることを指し、フロア効果とは平均値-1SDがデータのとり得る値の下限を超えていることを指します。
 
SDとは標準偏差のことで、あるデータの平均値から標準偏差を足したり、引いたりした時にありえない数値となるということです。
 
例えば、100点満点のテストを30人に行った結果、平均点が90点±20点だったとします。
 
この時、平均値+1SDを計算してみると90+20で110点となりますが、100点満点のテストなので、110点という数値はありえないため、天井効果が出現していると言えます。
 
同様に1点~5点をつける心理尺度の回答の平均点が1.5±0.7点だったとします。
 
この時、平均値-1SDを確認すると1.5-0.7で0.8点となりますが、1点~5点をつける尺度なので、この時はフロア効果が出現していると言えます。
 
標準偏差についてはもっと詳しく知りたい人は過去の記事「【標準偏差とは?】基礎知識や必要性、Excelで簡単に計算する方法を画像付きで分かりやすく解説!!」も参考にしてみて下さい。
 
天井効果とフロア効果の概念図

なぜ天井効果、フロア効果が起こるのか

天井効果やフロア効果が起こる理由は「回答が上限値もしくは下限値に偏る」ことに集約されますが、回答が偏る原因は複数考えられますので、そちらについて詳しく解説していきます。
 
ちなみに天井効果やフロア効果の問題が出現するのは当然ながらデータに上限値もしくは下限値が存在する場合のみです。
 
気温などの上限値もしくは下限値が存在しないデータの場合は天井効果やフロア効果は問題になりません。
 
また、身長や体重などの異常な外れ値の出にくいものなども天井効果やフロア効果は起こりにくいです。

データが上限値もしくは下限値に偏っている

これは上でも書きましたが、天井効果やフロア効果が起こるそもそもの原因です。
 
例えば、心理尺度などで「1点:当てはまらない~5点:当てはまる」みたいな尺度の場合、多くの人が1点もしくは2点の低得点をつけた場合にはフロア効果が出現しやすくなります。
 
しかしこの時、全員が1点もしくは2点をつけた場合にはフロア効果は出現しません。
 
そればデータのバラつきが少なくなり、標準偏差も小さくなるからです。
 
多くの人が低得点をつけている一方で、一部の人が高得点をつけた場合に、標準偏差が大きくなり、フロア効果が出現します。
 
このデータのバラつきと標準偏差については「【標準偏差とは?】基礎知識や必要性、Excelで簡単に計算する方法を画像付きで分かりやすく解説!!」を参考にしてみて下さい。
 
この記事の理解がもっと深まると思います。

データが正規分布していない

データが偏っている場合は正規分布しないので当然とも言えますが、正規分布していないデータは天井効果やフロア効果が出現しやすいです。
 
尺度水準から考えると、一般的に比率尺度と間隔尺度は正規分布、順序尺度は非正規分布であるとされています。
 
そのため、順序尺度のデータに関しては天井効果やフロア効果の出現を疑うべきだと思います。
 

サンプルサイズが小さい

サンプルサイズが少ないと偶然の偏りの影響を受けやすくなります。
 
上の1点~5点の心理尺度を10人に行ってみて、最初の10人ではたまたま1点が8人、5点が2人だったとするとフロア効果が出現してしまいます。
 
その後、サンプルサイズを増やしていくと、2点~4点をつける人もいるかもしれませんよね。
 
サンプルサイズが少ないとこのような偶然の偏りの影響を受けて、天井効果やフロア効果が出現する場合があります。
 
サンプルサイズについては過去の記事「【サンプルサイズの決め方】基礎知識や必要性、無料の計算ソフトについて分かりやすく解説!!」も参考にしてみて下さい。

天井効果、フロア効果は問題なのか

天井効果やフロア効果が出現している設問は絶対にダメ!!ということはありません。
 
すでに世に出ている心理尺度や測定手法でも天井効果やフロア効果を認めるものは多くあります。
 
天井効果やフロア効果が出現している項目は、回答が偏る可能性があるということを理解しておくことが重要です。
 
回答が偏ることを承知でそれでOKとするならば、問題ないと僕は思います。
 
例えば精神疾病のスクリーニング尺度などは、多くの疾病を有していない人は低得点だけど、疾病を有している人は高得点をつけます。
 
この場合は回答は偏るし、おそらくフロア効果が出現するでしょう。
 
しかし、疾病を有している人を確実に発見するという点については問題ないと思います。

天井効果、フロア効果の対策

天井効果やフロア効果の対策が必要な場面の多くは新しい心理尺度を作成するときだと思います。
 
心理尺度を使用した横断研究や実験研究などでは天井効果やフロア効果が出現していたとしてもどうしようもありません。
 
その場合はノンパラメトリックデータとして代表値を中央値として報告したり、ノンパラメトリックな手法を用いて分析するしかないと思いますし、そのような研究では天井効果やフロア効果について指摘されることはないと思います。
 
一方で、心理尺度を新しく作ろうという場合には天井効果やフロア効果に対策をする必要があります。有効な対策としては以下の3つがあります。

  • 項目の偏りやすさを事前に十分に確認する
  • リッカート尺度の件数、文言に注意する
  • 他の項目分析結果を併用して考える
ちなみに、ノンパラメトリックデータや中央値について詳しく知りたい人は「【平均値と中央値について】それぞれの特徴と使い分けを具体例つきで徹底解説!!」も参考にしてみて下さい。

項目の偏りやすさを事前に十分に確認する

尺度を作成し、データをとり始める前に、その項目が偏った回答となりやすいかどうかを事前に十分に検討しておくことが必要です。
 
もし、偏りやすいと判断できても尺度から取り除く必要はありませんが、天井効果やフロア効果が出現する可能性があること、出現したら項目は除外するのかどうかくらいは事前に決めておきましょう。
 
結果として、回答が偏らなければOKですし、偏った場合も適切に対処できるようになります。
 
例えば、「自分は完璧な人間だと思う」のような項目では日本人は低得点に偏るのではないかと事前に予測しておき、偏った場合は項目から削除するなどの対策方針も決めておくことが有効です。

リッカート尺度の件数、文言に注意する

心理尺度の多くはリッカート尺度を使用することでしょう。
 
この時は何件法の尺度にするかを決めるわけですが、多くなればなるほどデータのバラつきは大きくなります。
 
また、回答文言についても以下の2つを比べてみるどどうでしょうか。

  1. 「1:当てはまらない  2:あまり当てはまらない  3:ややあてはまる  4:当てはまる」
  2. 「1:当てはまらない  2:少しあてはまる  3:かなりあてはまる  4:当てはまる」
①よりも②の方が、データが偏る可能性が高くなりますし、自動的に天井効果やフロア効果も出現しやすくなります。
 
何件法の尺度にするか、回答文言をどうするかについても十分に吟味する必要があります。

他の項目分析結果を併用して考える

先にも書きましたが、天井効果やフロア効果が出現したら即NG!というわけではありません。
 
項目分析はその他にも色々な手段があります。
 
項目の内容や識別力、困難度、因子分析の結果などを総合的に判断する必要があります。
 
僕個人としては天井効果やフロア効果が出現していても削除する優先度は高くないと思っています。
 
それよりも識別力や困難度、因子分析の因子負荷量の方を重視して項目を選定していくべきかなと思います。

まとめ

  • 天井効果とは平均値+1SDがデータのとり得る値の上限を超えていること
  • フロア効果とは平均値-1SDがデータのとり得る値の下限を超えていること
  • 天井効果やフロア効果が起こる理由は「回答が上限値もしくは下限値に偏る」こと
  • 天井効果やフロア効果が認められる項目は、回答が偏る可能性があるということを理解しておくことが重要
  • 対策としては、①項目の偏りやすさを事前に十分に確認する、②リッカート尺度の件数、文言に注意する、③他の項目分析結果を併用して考える
いかがだったでしょうか。今回は天井効果とフロア効果について解説をしました。
 
天井効果やフロア効果自体は簡単な内容ですが、どのように解釈して、対処するかという点については意外と奥が深かったのではないでしょうか。
 
正しく理解しておいて損はないと思います。
 
この記事が天井効果やフロア効果に悩んでいる人の手助けになればうれしく思います。
 
天井効果やフロア効果についてもっと詳しく知りたいという人は、以下の本が参考になります。
 
天井効果やフロア効果だけでなく、心理尺度研究に関するノウハウが詰まった本です。
 
少し古い本ですが、今でも心理尺度を使った研究においてはかなり参考になると思います。
ぜひ読んでみてくださいね。

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